代表取締役インタビュー

代表取締役

西川智之

取材日:2017.11.07

「カラビナフードワークス」社名の由来を教えてください

「カラビナ」って言いにくいですよね(笑)カラビナは登山用具のひとつです。金属でできていて人とロープやハーネスをつなぐ役割するとても大事な道具です。
僕は子供の頃ボーイスカウトに入っていたり、大人になってからもキャンプや登山をしたりとカラビナはなじみのものでした。何か登山用具で会社名をつけたいと考え、「食」は人と命をつなぐ肝心要の部分なので、飲食業界でそういう存在になりたいと思いそう名づけました。ご飯を食べないと生きていけませんし、それを扱う大事な会社という意味も含んでいます。

同業他社と比べて経営上の工夫はありますか

一般的に飲食業の場合、会社が大きくなるとカフェや和食、洋食など様々なジャンルに事業を展開していきますが、僕らはイタリアン1本に絞っています。このあたりが他の同業会社とは違うところかもしれません。店の見せ方や店名も違いますが、やっている料理はイタリアンだけです。若干、和食をやりたい欲も出てきますが(笑)、それをやってしまうとイタリアンを学びたい人が集まらなくなってしまいます。仮に様々な展開をしているとすると、イタリアンをやりたくて入った人が、「え!?俺、和食?私、カフェやるの?サンドイッチ作るの?」みたいな話になり、ミスマッチが起こります。カラビナはイタリアンを軸とし地域に合った業態に変える手法を取っていくことで幅を広げていきます。
僕は珈琲屋の自家焙煎店の出身で、最初はイタリアンに全く興味がなくカフェをしようと思っていました。しかし1店舗目を出す時に雇った料理長があまりにもイタリアンの腕が良すぎましてカフェにすると彼の腕を殺してしまうと思い(笑)イタリアの国旗を飾ってイタリアンを始めたんです。

世間の人に「イタリアンといえば?」と質問すると「パスタ」「ピザ」などの料理名がすぐ出てきます。では「フレンチといえば?」の質問には「高級」「フォアグラ」「ソース」などイメージや食材は出てきても、なかなか料理名は出てきません。これには圧倒的な差があり、それだけイタリアンは一般的に浸透してるということです。だから僕はイタリアンで運が良かったと思っています。もし、その料理長がフレンチの腕前が良くても僕は恐らくやってなかったのではないかな。

一時ロールケーキが流行りましたよね。みんなが知っているロールケーキですが、今までのロールケーキとは違うものが取り沙汰されますよね。そのあたりのギャップを楽しんで不協和音を起させる事が大事だと考えています。ティラミスといえば茶色ですが、黄金のティラミスと聞くと、お!ってなりますよね。 例えばイタリアンのドルチェ(スイーツ)で「ババ」という美味しいものがあるのですが、それを作ってもみんな知りませんよね。それを広めようとしたらそれはしんどくて大変です。それならティラミスやチョコレートケーキから攻めた方が良いと考えます。そういう意味でもイタリアンは強みがあります。

あと、それぞれの店舗が近い事もあり割とスタッフが移動もしますね。それぞれの店舗の良い部分を交換留学的な要素で取り入れるのが目的です。店舗ごとの空気感や文化を相乗効果で活かしていけたらいいなと思い、人材を入れ替えることは意識してやってます。

生産者訪問、業者の方をを含めた経営報告会、食レポ手当て等カラビナならではの制度を実施するにいたった経緯を教えてください

まずは生産者訪問についてです。 僕らは人の口に入るものを提供している責任があり、提供するからには何を誰がどんな思いで作っているのかという事を知っておく必要がある考えています。これは最初に出店した頃から意識していることです。先述した腕の良い料理長から「前の店では高くて仕入れができなかったが、ぜひ使いたい野菜がある。」と言われました。なぜ高いのか、その理由が実際に生産している現場に行けば分かりましたし、その場で食べたら他のものと明らかに味も違う。
同じ様に自分が体験した事を、従業員にも体験してほしいと思いました。そもそも仕入れる素材にこだわっているというのがベースにあったので、この生産者訪問は成り立ち易い土壌があり実施にいたりました。
最初は千葉県に情熱大陸に出演された農家さんを訪問しました。実際に行ってみると本当にすごくて、水まきに使う水に海洋深層水を使用しているなど、ものすごい努力をされていました。土作りからこだわってされているので、その畑の雑草までもおいしかったんです!(笑)

僕自身が最初から食の安全を気にかけていた事もありましたが、出会った料理長が一から全て自分で作りたいという考えで、一般的には仕入れたドレッシングをかけて出すと思うんですが、それも手作りしていました。素材も手間も大事にしているこの思いは大切にしてあげたいなと思いました。
全く料理ができない僕が、その料理長の姿勢をずっと間近で見て、スープひとつ作るのもこんなに大変なんだと改めて知りました。でもスープというのはたいてい一瞬で飲まれてしまう(笑)でも正直なところ料理作り出す手間や、食材をこだわって生産している作り手の思いなどは、料理を見て食べるだけでは感じづらいと思うんです。野菜作りは自分達ではできないけれど、それを責任をもってやってらっしゃる農家さんをスタッフが見に行く事で、それを共有しお客さまにもお伝えできたらと思っています。

この気持ちを共有・共感したいという思いは経営報告会にもつながっています。僕が前に働いていた珈琲の焙煎店は平等に人を大切にするお店でした。「表から入ってくる人も裏から入ってくる人もきちんと平等に接しないといけない。お店は裏から入ってくる人たちによって支えられている。裏から入ってくる人がいなかったら何もできない。」という考えのお店でした。
僕はその考えがとても大好きで尊敬していて、カラビナでもそういう考えは浸透させたいと思いました。業者の方は色んな飲食店を裏口から見てるので、その飲食店の本当の姿を一番知っています。ぼくらの店に来る時は気持ちよく来て欲しい。あそこの店に行くの嬉しいな楽しいなと感じてもらいたいですね。

食レポ手当も自分で体験して感じて欲しいという考えからです。食レポに至ったのは、職場と家との往復だけでは何も成長しない、学べないと僕が思ったからです。店で学ぶのにも限界があるし、やはり他店の美味しいもの、美しいもの面白いものを見て感じた方が絶対に勉強になります。
休みの日にもっと色々な所に行って欲しい。しかしそれを強制するわけにはいかないので、それならばと会社の経費で出すことにしました。レポート用紙1枚は書いてもらいますが、彼女と行ってもいいし家族と行ってもいい。誰とどこへ行ってもいいから、何かしら参考になるお店に行って何か1つでも学んできて経験値を上げてほしいという気持ちです。

人を育てると、巡り巡って会社にとってもプラスになります。

※食レポ手当=カラビナ教育制度のひとつ。(社員にひと月につき上限5000円まで支給されます)

大切にしている考え方などございますか?

いつも朝礼の時、弊社が大切にしている「10のマインド」の質問をしています。質問は毎週変わりますが、例えば「今誰に感謝していますか」とか「今週はどの様な言葉遣いに気を付けますか」などです。基本的な事ですが、人間はその当たり前の事がなかなかできなくなります。当たり前の事を当たり前にする事で、その当たり前のレベルを上げようと思っています。当たり前のレベルの差が、会社の業績や社風の差に影響すると考えるからです。特に挨拶は、会社の差を感じます。元気な挨拶が当たり前の会社は、普通の挨拶でも元気があります。

ホールも料理人もソムリエも、どんな役職でも「技術は人格の上に立つ」と考えます。きちんとした挨拶など、こういう事ができる習慣、人格を仕事の中で身に付けてもらっています。

現在・これからの飲食業界のついてどう思いますか。

正直、将来の見通しはあまり明るくありません。食材の仕入れ値が上がっていたり、酒税の関係でビールの値段が一斉に上がったり、人件費の高騰もあり噂では名古屋の時給が高く、居酒屋などでは全然人が採れないと聞きます。これからの飲食は益々厳しくなるのではないでしょうか。

飲食業界自体の店の数は変わらないと思います。チェーン展開している様な大手企業は無人化し、例えば回転寿司チェーン店などは完全無人で衛生面を売りにして売っていくのかな。その差ははっきりしていくと思うので中途半端な効率化ではダメでしょうね。その中で僕らが生き残る道は、いかに「人」で売るかです。
最近、外食は何の為にあるのかという事を従業員みんなに問いかけています。人間というものは他の人と深くつながりたい、というところがある。だから「いっぺん飯食いに行きましょう」と誘うんです。デートするのも、映画を見て終わるよりも映画を見た後に二人でご飯を食べる方がより一層仲良くなれるんですよね。接待でも、食事があると、同じ時間を共有して食べ合う事でより一層親密度が増します。先ほどまで全然お互いを知らなかった仲なのに…食べる行為は一番本能に近いんです。その本能を見せ合ってお互いの腹を割り合う。そこにお酒があるとより心が開きやすくなるんです。

僕は外食の基本はこれだと思っています。僕らがやってはいけない事は、腹を満たすだけの外食やこれだけを食べたら終わりですという外食です。

これからのカラビナをどうしていきたいですか

人間関係が良くなる様な外食を作っていきたいです。食というツールを使って様々な人や人の思いをつないでいきたいです。「食でつなぐ人と街」それが僕らの大きなテーマです。「街」は一人一人の皆さんの存在で成り立つので、僕らは出店する時に例えば「ENTRATA」という店で出店したいけど、この街に合うか、少し酒場寄りにした方がこの街が良くなるのではなども考慮します。そうすることにより、お店の近くを通る人たちや暮らす人たちが楽しくなる。自然とそこの街に合う人が集まってきます。

僕らは今大阪の中心で営業をしています。それは絶対に外したくありません。なぜなら圧倒的に消費の量が多いからです。
都会の中心で出店し営業する。するとたくさんの食材が消費される。必要な食材はカラビナからのロープでつながった地方から仕入れる。地方の小さな漁港を支援して、そこから魚を毎月1トン仕入れるという形が理想です。地方創生というカッコイイ言葉がありますが、その意味をしっかりと考えたい。僕らとつながることで遠くの町が潤っていくためにも、都会にはこだわりたいですね。

どんな人材を求めますか

キャッチボールが出来る人がいいですね。投げかけてもズレる人っていますよね。僕もズレるタイプなので、大きな声では言えませんが(笑)あと、かわいらしい人がいいです(笑)男女に関わらず、美人だとか美人じゃないとかというのではなく、人とコミュニケーションをとるにあたっての良い人格の顔を求めますね。外見は内面がにじみでると思っています。お客さまに対し気持ちも良い表情で接客ができるか。だから企業説明会などにも実際に僕が行って話をしています。面接の時になるとみなさん気が張っていますが、その前に説明会で何人かが集まって話を聞きに来ている時の、素の姿を見ておきたいんです。そこでの印象は、実際に働いてみても大体印象通りです。

カラビナの面接は結構長いです。ほとんど僕が喋っていますが(笑)ミスマッチを防ぐ為に、僕とこの会社は何を目指していてどんな会社なのかという事をきちんと説明しています。面接に来る人は会社に対してある程度良いイメージを持ってくるので、それを消していかないと良いイメージのまま入社されるとこんな筈ではなかったとなってしまうので、僕は面接時に問題点も全部話すので長くなってしまいます。mothersの問題点はこれで・・・、堂島店はこうで・・・とか、この店のこの人は社交性がなくてとか(笑)全部話します。

業績が良くても問題点山積みの会社もあります。もちろん業績が悪いのは問題点だし、それぞれ会社で問題のないところはないと思ってます。だからお互い自分の問題点は公表して話し合うべきです。その問題点を解決していくのは、これから社員として入ってくるみんなだよと伝えています。

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